父、はじめてのお泊り
正月前におこった父の意識消失によって
すっかり自信を失った母の頼みで
介護老人保健施設に1ヶ月の入所を予約した。
空きが出るまで数か月かかると思っていたが
「一泊二日のショートステイの空きがでましたが、いかがですか?」
という連絡がはいった。
ショートステイ前①
実は、担当のケアマネージャーさんに父の施設入所を相談に行ったあと、
そのケアマネージャーさんが実家を訪問してくれた。
いくら家族が入所させたいと思っても
本人が頑として拒むなら難しいと考えたからだ。
私は、その時、同席していなかったのだが、
ケアマネージャーさんは父に
「父の体調が不安定なこと」や「母の負担の大きさ」などを丁寧に説明し、
リハビリを兼ねて施設に入ることを勧めてくれた。
父も「行ってもいい」と承諾したと、後で電話があった。
ショートステイ前②
それからすぐに、入所予定の介護老人保健施設のスタッフが
父の状況把握と説明をかねて自宅にきてくれた。
スタッフの方は、和やかな雰囲気を作ろうと必死に明るく話していたが
父の警戒感はマックス。
話の後半になって、スタッフさんに
「あんた、声大きいけど、誰や」と聞き出す始末。
ショートステイ前③
一泊二日のショートステイが決まって、介護老人保健施設のスタッフが再訪。
契約書や注意事項、持ち物などについて説明し、
父に「じゃあ、当日よろしくね」といって帰られた。
ショートステイ前日
ショートステイ前日、足りないものの買い足しがあり、実家に行く。
たった一泊だが、電気毛布まで用意してあり、大きなカバンが3つも並んでいた。
しかし、このカバンを見て、はじめて父は何かを悟ったようだった。
明日、どこ行くねん。
明日、「○○(介護老人保健施設の名称)」にお泊りに行くねんで。
とうとう、おんだされるんか!
そんなんちゃうよ。一泊だけ泊まって、リハビリしたりするねん。
うまいこと、騙したな。
騙したりしてないよ!お父さんも「行っていい」って言ったし、スタッフの人も何回も説明しに来てくれたやんか。
「○○(介護老人保健施設の名称)」やったら、(こっそりぬけだして)帰ってこれんこともないぞ。
や、あの、一泊だけやし、そんなんせんといて。お父さんも、お母さんから離れてゆっくりしてきたらいいやん・・・。
父は認知ではないが、
やはりあまり理解していなかったらしい。
というか、もともと人付き合いが苦手でデイケアにも消極的な父が、
「お泊り」に同意したのがそもそも信じられない話だ。
「もしかしたら理解してないかもな」と私を含め全員が心の片隅で思っていながら、
「父も同意した」と自分に言い聞かせていただけかもしれない。
私は、それ以上父の本心を聞き出そうとはせず、その場をそっと離れた。
当日
10時のお迎えはスムーズに終わったと、
母から連絡があった。
意識喪失が10分続けば救急車で搬送するという約束だったので、
私はいつ連絡が来てもいいように、携帯に張り付いて二日間を過ごした。
帰宅後
帰宅した日は、
「無事帰りました」とだけ母からのLINEメッセージ。
特に問題なく帰ってきたことにほっとする。
数日後に訪ねて、父に「どうだった」と聞いてみた。
どうもない。ほったらかしや。
かまって欲しかったんか~い。
このようにして、父の一泊二日のショートステイは終わった。
今後、1ヶ月のショートステイが待っていることを父は知らない。
つづく・・・。
50女の心得
つらいね。