親が元気なうちに受講したい「介護の入門的研修」

50代になると親の介護問題が身近なものになってきます。

弱っていく親を見ているうちに、自分たちの老後もふと心配になってくる・・・。

心配していても仕方ないので、2021年1月、京都府で開催された「介護に関する入門的研修」に参加してきました。その内容と感想をご紹介します。

入門的研修の概要

誰が受講するの?

「入門的研修」の目的は、「介護に関心を持つ介護未経験者に対して、介護の業務に携わる上での不安を払拭するため、基本的な知識を研修することにより、介護分野への参入を促進する。」こと。

つまり、介護について何も知らんけど、ちょっと興味があるという人が最初に受ける研修。

「入門的研修」は、主に都道府県及び市区町村が主催者として開催されます。開催者の目的は介護施設で働く人を増やすことのようですが、介護職員になる気がなくても受講は可能。

研修修了者は修了証明書をいただけます!

入門的研修修了証は資格ではありません。実際、この修了証や資格がなくても、介護施設で介護職員として働くことはできます。

ただ、「介護福祉士」等、上を目指すのであれば、この入門的研修の修了証によって研修が一部免除になるので、もらっておいて無駄にはなりません。

その内容は?

ざっくりとした内容は表の通りです。

研修の分類研修内容研修時間
基礎講座 3時間介護に関する基礎知識1.5時間
介護の基本1.5時間
入門講座 18時間基本的な介護の方法10時間
認知症の理解4時間
障害の理解2時間
介護における安全確保2時間
合計21時間

私が受けた研修は、4日間コース。週2日間を2週連続でおこないました。4日目を除き、朝9時から夕方5時まで。昼食持参です。

開催者によって、内容は同じでも、3日コース5日コースにしているところもあります。

介護をするための基本的な考え方から基本動作、介護施設の仕事や介護にあたって注意する点など、基本的なことが網羅されている。

私が受けた講座ではテキストをもらえました。これも各自治体によって様々だと思います。

ファイルは120ページほど。かなりの分量ですが、講師の先生方もお話しが上手で退屈することはありませんでした。

また、車いすや杖を実際に使ってみる実習や、グループワークする時間もあり、眠たくならないように工夫されています。

紙おむつをパンツの上から履いてみる実習もありました。ただ、コロナ禍なので参加者が交流する活動は最小限となっています。

どこでやっているの?

定期的にやっていたり、希望すれば受講できるという環境はまだ整っていないようです。私の場合は、たまたま、市の広報の中にチラシが入っていました。

都道府県及び市区町村が主催者(当道府県が福祉施設に委託する場合もあり)ですので、市町村に直接問い合わせる、または「介護 入門的研修 京都府」等で検索すると何かしら情報がでてきます。

私の場合は、市役所の会議室で行われましたが、公民館、貸し会議室、介護施設等さまざまな所で開催されてます。

昨年の実施状況データはこちら(リンク切れの可能性あり。その場合は厚生労働省のサイトを検索してください)。

コロナのおかげで開催数も減少傾向にあるので、長い目で探してください。

チラシに書いてある定員は15名。希望者が多かったようで、最終的には30名ほどの受講者がいました。「4日間すべて参加できる人を優先した」とスタッフの方が言われていたので、実際の応募者はもっと多かったのだと予想されます。

費用は?

費用も各自治体、主催者によって違いますが、ほとんどの場合無料です。資料代と称して1000円程度徴収しているところもあります。

詳しくは、厚生労働所のHPをご覧ください。

入門的研修を受講した感想

受講の動機

父親が80歳を超えた頃から数々の不調がでてきました。

4歳年下の母も元気に頑張っていましたが、80歳を超えた頃から自分の判断力に不安を感じるようになり、ことあるごとに相談してくるようになりました。

車で40分ほど離れたところに住んでいるので、週1ぐらいで訪ねて、病院に連れて行ったり、家事を手伝ったり、話し相手になったり。

しかし、そんな生活を続けて5年ほど経つと、私の方に変化が表れてきました。

「行くのが辛い・・・」

両親はまだ自分で自分のことができ、私も介護というほどの事もしていないのに、「明日行かなきゃ」と思うと心が重くなるのです。学校に行きたくなくてお腹が痛くなる子供に似ているのかもしれない。

両親を訪ねるときまって、「お互(父と母)いの不満」「毎日の生活の苦しさ」「将来への不安」を何時間も聞かされます。それが5年も続くと、答えのない同じ話にうんざりしてしまうのです。

軽い「介護うつ」。介護もしていないのに「介護うつ」とは情けないかぎり。

しかし、本格的な「介護うつ」にならないためにも介護の事を知った方がいいと思ったのが、入門的研修を受けた理由。

入門的研修で学んだこと

精神的な介護

介護って、食事の用意をしたり、お風呂に入れてあげたり、排せつの世話をしたり、具体的な活動を想像する人が多いのではないでしょうか?

私もそうでした。両親が出来いことを私が代わりにやってあげなければならない、と。

でも、その前に肝に銘じておくことがあります。

介護とは、「その人がその人らしい生活ができ、人権と尊厳を保ったまま、可能な限り自立できるように支援すること」なんです。

赤ちゃんと違って、お年寄りはそれぞれ違う人生を歩み、それぞれ慣れ親しんだ習慣がある。

赤ちゃんと違って、羞恥心やプライド、人への思いやりなど色々な感情がある。

赤ちゃんと違って、まだまだ出来ることもあるし、出来ていたことが出来なくなることもある。

そういう様々な状況を理解し、その人が出来ることを可能な限りやってもらう。

例えば、右半身不自由な人なら、左半身で出来ることは自分でしてもらう。時間がかかっても辛抱強く待ち、それができる環境を作る事が大切。

自分で出来ることがあれば、生きている実感もあるし、たとえ小さな事であっても「役に立っている」と感じることができる。それが尊厳を守ること。

ただ、「こんなことも出来ないの?」と、さっさと代わりにやってあげることではないのです。

認知症患者についても、目からウロコの学びがありましたが、長くなるので割愛させていただきます。

そういうことを学びました。

身体的な介護

車椅子の操作方法腰痛にならないための姿勢なども教わりました。

しかし、車椅子の操作を学ぶより、実際に自分が車椅子に乗ってみて気づきがありました。

車椅子って、けっこう、怖い。

段差を超えるために車椅子を後方に倒すのですが、「力が足りなくて、後ろに倒れてしまうんではないか?」と思わず身構えてしまう。

信頼関係がなければ、身体がガチガチになって、かなり疲れそうです。

紙おむつを服の上から着用する実習もありました。

参加者全員、自分が着用する側になることを想像もしていなかったので、恥ずかしくて苦笑い。

でも、実際必要になって紙おむつを着けるとすると、恥ずかしさだけでなく、情けなさや、「自分はもうダメなんだ」とすごく落ち込むだろうことは容易に想像できました。

だから、安易に「紙おむつにすれば!?」なんて提案することはできない。本当に最終手段です。

介護する側への注意事項

介護する側が陥りやすいのが腰痛

これについては、重心を下げる足幅を広げる等の基礎知識だけで終わりました。

親の介護であれ、介護職員になるのであれ、本格的介護生活にはいるのであれば、もう少しちゃんと学びたい項目でした。

これだけ取り上げた研修を行えば、在宅介護者も大分楽になるんじゃないかなあ。

私が欲していた、介護側の心のケアについて触れる機会はなく、残念な点ではありました。

しかし、とりあえず、日本の介護システムについて知り、どのような介護が必要なのかを知ることができたことは、今後の自分の行動に反映できると思います。

最後に

いままで、介護の仕事については、「3K(きつい、汚い、危険)」というネガティブなイメージしかありませんでした。

だから、両親の介護に直面し、気持ちが萎えていた面もあると思います。

しかし、この仕事に真摯に取り組んでおられる素敵な講師の方々のお話しを聞くうちに、今の日本を作ってきたご高齢者が安らかな気持ちで最後の人生を全うするお手伝いって尊い仕事だと思うようになりました。

4日間の講義は、お仕事をしているとなかなか受講するのは難しいと思いますが、土曜日のみ開催している所もあるようです。

突然の事故で急に介護が必要になることもあります。その時慌てることなく対処できるように、ご都合の合うものがあれば早めに受講されることをお勧めします。

介護する方もされる方も、いざと言う時の心構えになると思うので、日本人全員受講した方がいいと思います。近所のご高齢者を見る目も変わってきます。中学校家庭科の授業に組み込むべき~!

50女の心得

介護。恐れずに、知ることから始めよう。

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