【介護】親の下の世話をするということ
90歳という高齢でありながら、食事、風呂、排せつに関しては自分で行える父。
寝たきりにならない限り、下の世話をする事はないと思っていた。
でも、その日は突然やってきた。
ドア越しに父がこちらを見ていた!
その日は、実家に行って
父のかかりつけ医に介護老人保健施設に入所するための資料作りをお願いすることになっていた。
実家に行くと、
父は「食後低血圧」のためか、ソファで爆睡。
(食後低血圧についてはこちら。)
お茶を入れて一服しながら、
外出準備をする母とおしゃべり。
しばらくすると父がトイレに立つのが見えた。
一人でちゃんと歩いている。よしよし。
しかし、いくら待てども出てくる気配がない。
「もしやトイレで動けなくなっているのかもしれない」と心配になり、
トイレへと通じる居間のドアに行くと、
ドアにはめ込まれたガラスの向こうに父が立ってこちらをじ~っと見ていた。
「どうしたん?」とドアを開けると
下半身裸の父が
「失敗した~」と小声でつぶやいた。
トイレに行くと、
マットの上には、大きなウ〇チと汚れた衣服が散乱。
「あじゃじゃ~、やっちゃったか」と思いながら
私自身、初めての状況に何をどうしたらいいのかわからなかった。
とりあえず、汚れた父をお風呂へ連れて行き
「お父さん、トイレ失敗したみたい~」と
母に助けを求めたが・・・。
母は逃げた!
「もう!お父さんったら!」と怒鳴り散らしならが
一歩も居間から出ようとしない母。
「ビニール手袋ある?」と聞くと、
「あるよ」といって、私に手渡す。
「ゴミ袋は?」と聞くと、
「あるよ」といって、私に手渡す。
「もう~いや!くさい!くさい!」
と叫びながらウロウロし、ある意味パニック状態らしい。
仕方ないので、父がシャワーをしている間に
トイレ内のウ〇チを新聞紙でくるんでゴミ袋にいれ、
下着とズボンも
「もう~、汚いから全部捨てて~」という母の雄たけびを聞いて
ゴミ袋にいれた。
その後、雑巾でトイレから風呂場まで
父が歩いた後を拭いて回る。
お風呂から出て綺麗になった父に対しては
母が着替えを手伝ってくれた。
「知っている」ということで冷静になれた!
確かに父の排泄物を見た時はショックだった。
しかし、自分で言うのも変だけれど、冷静に対処できたと思う。
それもこれも、1年前に受講した「介護に関する入門的研修」のおかげだと思う。
この研修では汚物処理方法などは教えてもらえなかったが、
介護で一番大切なことを教えてもらった。
それは、介護というものは
「その人がその人らしい生活ができ、人権と尊厳を保ったまま、可能な限り自立できるように支援すること」
父の頭はしっかりしている。
ただ身体が思うように動かないのだ。
当たり前のようにできていたことができなくて、一番ショックを受けているのは父のはず。
それを、叱ったり、けなしたりすれば、父の尊厳はズタズタになる。
「びっくりしたね。けど、もう大丈夫。」
全てが終わって、父に声をかけた。
娘に自分の排泄物の処理をさせてしまったので父も気まずかっただろう。
便秘気味だったので下剤を飲んでウ〇チが止まらなくなったと告白した。
あの研修を受けていなかったら
母と一緒になって父を責めていたかもしれない。
でも、予め高齢者の気持ちや介護の心構え等をきいていたので
嫌悪感を抱くことなく対処できた。
その後、介護施設の人と話す機会があったので
具体的な排泄物の処理方法などについて教えてもらった。
今度はもっとテキパキできるだろう。
母に対しては
「いつの日か、お母さんの”くさい”ウンチを私が片付けるんだよ」
という言葉をぐっと飲み込んだ。
50女の心得
予備知識、大事です。