鯖よみ族

「鯖を読む」
デジタル大辞泉 によると「実際より多く言ったり少なく言ったりして数をごまかす。」こと。
30歳なのに28歳と若く偽ることが多いのではないでしょうか。
私は、現在58歳なんですが、今まで若く偽ったことはない。
だって、ばれた時、もっと恥ずかしいじゃないですか。
本当の年齢を言って、どう思われたっていいし。
でも、なんか、ちょっと変わってきた気がするんです。
鯖を読む母
ちょうど1年前の話。
母親と一緒に石川県に1泊旅行をしました。
亡くなった父の遺骨を半分、先祖代々の墓におさめるために。
宿泊先は「大江戸温泉物語 ながやま」。
夕食はビュッフェスタイルで、カニ食べ放題。
たらふく食べた後、周りを見渡すと、年配のご夫婦がとなりに座っていた。
年のころは70代後半だろうか。
奥さんは、髪をきれいに染めていて、お化粧もちゃんとしている小ぎれいな方だった。
私の母は、誰にでも遠慮なく話しかけるタイプで、いつものように話しかけた。

ご旅行ですか?
そうなんです。主人とバス旅行で。


そう、それはうらやましいわ。私は主人の納骨に来たんです。
なんて、色々話していると、自然に年齢のはなしになり、その女性が82歳であることがわかった。
当時、私の母は87歳。
5歳ほどしか変わらない。
やはり、身なりをきちんとすると若々しく見えるもんだと、横で感心していた。すると、

私は、90歳です。
と母が鯖を読んで答えた。
「えっ!?」と思いつつ、話を合わせていると、今度は

大阪に住んでます。
と、言った。
確かに、大阪に住んでいた時期もあったが、もう50年近く奈良県に住んでいる。
なんで、そこでも嘘をつくのだ!?
鯖を読む理由
母が嘘をついた理由はただひとつ。
「自分をよく見せたいから」
思っていたよりも年齢が高かった女性に対し、「負けるもんか」と思った母は3つ鯖を読んだ。
実年齢よりも若く見えることを望んだのだ。
「大阪」と答えた理由は、こうだ。

奈良は知名度が低いから、どこか知らんかもしれへんやろ。
奈良に失礼です!
ともあれ、これ以降、88歳の今も、母はいつも「90歳です」と答えている。
鯖の読み方
私が若いころには、明らかな年齢差別の文化があった。
先日見たNHKスペシャル 未完のバトン 第3回「“均等法の母”に続く長い列」では、
「女子は、
①結婚をしたとき、または
②35歳に達した時、退職する」
と明記されている社則が映し出された。
昔前は、25歳の独身女性は売れ残りを意味する「クリスマスケーキ」などと呼ばれ、年齢を下にいう必要があった。
最近は、年齢による差別撤廃も叫ばれ、あからさまな年齢差別は少なくなってきている。
しかし、身体にしみついた年齢のイメージは根強い。
ばれると余計に恥ずかしいので、35歳なのに「30歳」と言うことはないかもしれないけど、「アラサーです」などと言って、なんとなくお茶を濁すこともあるのでは?
「若く見える」という事よりも、若く見えなくても「若いグループ」に居ることが重要なのだ。

実年齢より上を言うことを「逆サバ」とも言うそうな。
母の場合は、もろ、逆サバである。
「年を取っている割には、若く見える」という感想が欲しいのだ。
はたして、何歳を境に、実年齢を上に偽るようになるのだろうか?
わたしも、鯖よみ族に入会
現在、59歳。
もうアラフィフとは言えない。
私自身は、常日頃、年齢詐称はせずに、正直にいこうと思っているし、そうしてきた。
しかし、最近、会話の中でよく出てくる言葉がある。

もう、還暦やから、そんなんできへんわ。
1歳、鯖を読んでいる。
まあ、「59歳」というより「還暦」と言った方が、話す方も楽だし、聞く方もすぐわかる。
しかし、29歳の時なら、決して「30歳です」とは言わなかったのではではないだろうか?
赤いちゃんちゃんこを着たおばあちゃんへ入口のような言葉、「還暦」。
還暦のわりに若い=おばあちゃんには見えない
その一言が欲しくて、年齢を偽っているのだろう。
私も、しっかり「鯖よみ族」である。
年齢による呪縛は消えない。
昨今、SNSでは、50歳には見えない女性や60代になっても頑張ってる女性がたくさんいる。
はたして、彼女たちから年齢をとったら、あれほど「いいね」がつくのだろうか?
去年、「誕生日を消す」宣言をして、誕生日に特別なことをしないようにしているのだが、病院にいったりすると嫌でも年齢を書かされて、年齢を忘れることは難しい。
鯖よみ族もいいかも
いっそのこと、鯖を読みまくるというのも・・・あり?
ある時は、

28歳です。
またある時は、

70歳です。
おもしろいかも。🤣🤣
年齢に関するごたごたはつきない。
それなら、それを気にしない自分を作るしかないね。
年齢で遊ぼう・・・か。